毒書日記9


これで当面の書評は最終回にできるか?


「新きこと面白きこと〜サントリー佐治敬三伝」
               廣澤昌・文藝春秋社・¥1800


秋田にあってはいつぞやの「熊襲発言」の為か評判芳しからずといった、佐治敬三氏だが前後の脈絡を読めば、マスコミや行政が言葉尻を捕らえて足元を掬ったのが良く分かる。まさに「小人は養い難し」。老舗の「ぼん」として生き・亡くなった氏の一生を通読すれば、その豊かな人生が羨ましく思える。決して経済的な事ばかりではなく・・・


孫正義 起業のカリスマ」大下栄治・講談社+α文庫・¥933


かれこれ25年にもなろうか、当時ようやくパソコンの、仕事での利用がカタチになり始めていた頃。販売に携わっていたオレは、弱小ソフトハウスの開発商品を一手に仕入れ、全国に流通させる「ソフトバンク」という会社を知った。人のフンドシで相撲を取る怪しげな会社だと思ったモンだ。おまけに半島系でチビでハゲ、オレの嫌いな要素をすべて合わせ持っているという実に「希有な」人物である。
その認識を変えることなく「yahoo!japan設立」「yahoo!BBサービス開始」「ホークス買収」とたてつづけに新機軸を打ち出して行く、このエネルギーに圧倒されてしまう。(日本ではまだ検索エンジンyahoo!のシェアは高いが、本国ではGoogleに圧倒されているようだ。)果たしてボーダフォンに高いカネを払って参入した携帯電話市場ではどのような戦いをするのか、ぜひ「予想外」の爆弾を期待したい。


「政商 昭和闇の支配者二巻」大下栄治・だいわ文庫・¥762


国際興業社主・小佐野賢治、従軍時代から常に権力と結託して財をなした、正に政商と呼ぶにふさわしい人物だ。その姿はロッキード事件の証人喚問で初めて白日の下に晒されたと言っていいのではないか。(実際の事件は特捜の上すべり捜査に終った感があるが)こういうウラの世界も知っていて悪いことはない。


「最後の晩餐」開高健光文社文庫・¥629


先程の佐治敬三氏が作った、サントリー広告部でライターとして活躍していた人だ。
釣りと酒と美味を心から愛した著者の、食事に関するエッセイ集。まさに博覧強記。こういう人を文学者と呼ぶのだろう。


「ビギナーズ・クラシックス 中国の古典 論語
             加地伸行角川ソフィア文庫・¥629


本当に久しぶりにいい本に出会った。孔子思想書である「論語」が今の世の中にもっとも必要なものを大部分含んでいるので素晴らしいのはもちろんなのだが、解説が優しく慈愛に満ちている。筆者は序文で「孫が中学生になったら読むという前提で書いた」と語っているが、よそのおじさんも感動しました。


ああ、今日も全部終れなかった・・・